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オーダーの詰め方③
見積提出前の確認
受注単価も凡そ決定し、見積書の提出をお願いされる場合があります。この時に注意する点がありますので説明します。
オフィスワーク系の場合は、ほとんど労働基準法と同じ内容で割り増しの請求が出来るのですが、主に製造工場や物流倉庫などのオフィスワーク系以外の派遣先への見積書提出のとき、40時間超えの割り増し賃金と同様に増額した単価で請求できるかという問題があります。これは24時間365日稼働している派遣先などのケースが多いのですが、前提としては、請求できないと考えておいた方がよいでしょう。
受注単価の交渉時では、お互いの常識とされている部分には触れず、細部にわたって話を詰めていない場合があります。この場合は、その部分を見積書の書面上で細かく取り決めて、お互い確認をするといった流れになります。その為、見積書の提出時に始めてお互いの認識の違いが明らかになることとなります。具体的には割り増し請求が出来るか否かといった話です。
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派遣先様から 「ウチは40時間超えの割増しは、無いよ」「そこは、他の派遣会社もどこも同じ条件でやっているから」 と言われてしまい実質的に請求単価の値下げに応じる形になってしまいます。進捗段階にもよりますが見積書提出後では交渉は難航しますから、受注段階で確認しておいて、その時に受注単価交渉をするのが一番いい方法です。しかしこのようなケースでは、見積書提出時に再度この点を踏まえ金額交渉するということになってしまいます。派遣先としては、オーダーをした段階で派遣会社から割増し部分は聞かれていないので40時間超えについて敢えて説明はしてきません。説明義務が有るわけでもありませんし聞かれた時にだけ事実を説明すればよい部分という認識です。稀に担当者によっては、後出しジャンケンの方が得だと分かっていますから聞かれない限り話してくれないという人も居ます。具体的に説明します。
請求単価2,000/時間で8h/日/6日/週勤務だとします。この場合6日に当たる日は25%割増が適応されますから2,500/時間となります。しかし、この割増が請求できないとなるとその額は500円×8時間=4,000円となります。1か月を4週間とすると、16,000円/月の値引きと同じこととなります。所定労働時間が160時間/月であった場合では、時給100円の値引き交渉に応じたことと同じです。この様に派遣が制約した場合に、後から値引き交渉を持ち出され、それに応じたと同じ結果になってしまいますから諸条件の確認・交渉は出来るだけ上流の工程で早く行った方が交渉力も強く大きなミスは少なくて済みます。業務確認までが終わり派遣社員の意志確認もOKで、残すは派遣のスタート日を調整するだけになった段階で、正確を記す為に見積書の提出を依頼されることもあります。この段階では既に時遅しです。実質的な値下げに応じざるを得ない羽目になります。又、同じように請求時間の単位についても同様の事が言えます。
労働基準法上では割増賃金の計算に当たっては、事務処理の軽減のため、その月における時間外の総労働時間数に30分未満の端数がある場合にはこれを切り捨て、それ以上の端数がある場合にはこれを1時間に切り上げることができるとされています。原則的には、毎日の時間外労働は1分単位で正確に計上するのが法定の正しい労働時間管理です。労働時間の端数計算を、四捨五入ではなく常に切り捨てで計算することは、切り捨てられた時間分の賃金が未払となるため認められていません。この労働基準法は、飽くまでも派遣会社と派遣社員の雇用契約に適応されるものですから、派遣先との法人間の取り決めとは別ものです。従って毎日30分単位の切り捨てで労働時間を確定する派遣先も存在します。又、派遣会社と数多く取引している派遣先の場合に例えば10分単位など一律に取り決められている事もあります。又、別に例えば、派遣会社5社から15名の派遣社員を受け入れているような利用規模の派遣先では、各社ばらばらに時間の単位を取り決めているケースもあります。一般的なのは、1分、5分、10分、15分、30分で切り捨ての運用となっていて大手ほど単位が短い傾向かあります。
注意点を説明します。時間単位が一律に決められている派遣先は、それに従うことで良いでしょう。問題は30分単位の運用をしている派遣先と各社ばらばらの取り決めがなされている派遣先です。先ず、切り捨ての運用について理解します。切り捨ての目論見は、「損はしたくないが、特ならしたい」です。基本的に派遣社員も人間ですからトイレも行きます、水も飲みます、世間話もすれば、短時間手が止まることもある訳です。ですから派遣先としては、拘束時間内のすべてが実質的労働時間とは、そもそも考えていません。ですから切り捨ての運用で丁度良い帳尻が合うと考えている節があるのです。しかし派遣社員の方からすると、毎日29分間時間カットされたらたまりません。1か月で9時間40分、8時間超えの割増し込み賃金が仮に1,250円とすると年間145,000円のただ働きをさせられても文句は言えない取り決めと言うことになります。実際には派遣会社から正規の労働時間で正確に支払われたとしても派遣元の会社からすれば、この分は会社の持ち出しです。せめて15分単位にはして欲しいわけです。例えば30分単位の派遣先に対してどのような交渉の仕方をするか説明します。
「30分単位ですと極端な例でいえば毎日29分の時間カットがされるわけですから、本来黙っているはずがありません、そうなると苦情を挙げてくるわけですが、不思議なことに実は全く苦情は挙がってきません。何故ならその前に必ずやる行動があるからです。」
「それは時間稼ぎです」
「やられたらやり返すのか、損した分を取り戻すのか、とにかく帳尻をあわせようとしてきます。」
「5分10分オーバーしても、何も起きませんが15分を超えて残業が発生し始めると30分が経過するまで必ず、時間を粘ります。必要な仕事を探してこなせば未だしも、仕事がスローになったり不要な仕事をしたりします。」
「これでは本末転倒です、返って労働時間が長くなってしまいます。」
「かといって抑制する有効な手立てはありません、注意指導してもその場だけで、目を離せば直ぐに基に戻ります。教育レベルの話ではありません。」
「お互い様の感覚です」
「他の現場でも同じ事が繰り返しありました」
「話し合いの結果、その会社はもう今は5分単位に変えてから、うまく回っています」
「良かったのは派遣社員側にも時間に対するコスト意識が間映え芽生え、無駄な仕事や作業手順の見直しなどの提案を積極的に行うようになって、小さな改善が積み重ねられて生産性も向上したそうです」
という内容で話す感じの交渉の仕方です。
もう一つの各派遣会社ごとに、ばらばらの取り決めの派遣先の場合ですが、一番いいのは派遣先の従業員と同じ時間単位にしてもらうことです。それが1分単位の場合などは派遣先の事務処理上大変なので派遣会社とは別途取り決めでお願いしているから勘弁してくださいといわれることもあります。その際は一番短い時間単位の派遣会社と合わせてもらう様にします。派遣社員も時間がカットされる事には当然敏感ですから、長い時間カットされることには不満が出ます。まして他の派遣社員と同じ時間まで働いて一方は18:00、一方は18:10まで労働時間がカウントされるということが起こり得てしまうわけですから不満は収まりません。そうすると、労働時間のカットに関することというのは予想以上に混乱をきたしてしまい派遣先へ安定的に人材を供給するという派遣会社の土台の部分が崩壊しかねません。その時に一番短い時間単位を採用させてもらっていれば一番混乱に巻き込まれにくい事になります。
最終的には、一番リアルに労働時間を反映する方法が何よりも優先されることが労働者派遣契約の最も重要な原則になってきます。それでも、交渉結果が不調に終わった場合の対応としては
「では、残業に関しては、30分単位で申し付けてください」
「派遣社員にも伝えて30分単位を徹底させます。それから一つだけお願いがあります。」
「御社でも現場の指揮命令者の方へ30分単位で残業を申し付ける事を十分にアナウンスしておいてください。」
「準備期間を経て○月○日より30分の残業に対応できない者は、全て定時で上がらせることで対応を統一させていただきます。」
と伝え実際に行動に移します。こうしておけば派遣社員、派遣先、派遣元ともにノーワークノーペイの原則に従い何ら問題は起きません。
繰り返しになりますが派遣社員には、支払い用として、もう一つのタイムカードを作るなりして正規の時間で支払う必要がありますから、派遣会社の利益率の問題です。ここは自由な交渉が許されますから派遣会社の正当な利益を確保するための交渉術も必要です。
いかがでしょうか。わずかな違いの繰り返しと時間の経過により自然と結果が大きく違ってくるということは、細部の仕組みまでもが重要であることを理解しているか否かの違いです。それは企業価値を左右するとても重要なことです。頭でわかっていても実行に移せるかどうかが重要です。興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せ・ご相談ください。